【Review】小野恵:ポケット図解 減価償却がよーくわかる本

 

ポケット図解 減価償却がよーくわかる本

ポケット図解 減価償却がよーくわかる本

 

 減価償却は業務上の実務でも簿記の勉強でも頻繁に出てくるルールなので、感覚的には理解しているつもりなのですが、改めて説明を受けた記憶がなかったので、療養中に一読してみたものです。

 

見開き2ページで減価償却とは、というところから財務諸表との関係、各固定資産の考え方などが初心者にわかりやすいように解説されています。常識と言えば常識なのかもしれませんが、この分野全く興味や触れる機会がないまま来ているビジネスマンもそれなりにいるので、そういう方々が読むのに最適だと思いました。

【Review】木曽 崇:「夜遊び」の経済学~世界が注目する「ナイトタイムエコノミー」~

 

カジノの専門家でもあり、Twitterでも頻繁に情報発信している著者が、観光は「稼げる観光」でないと、結局疲弊するとし、ナイトライフエコノミー(日没以降翌朝までの間に行われる経済活動)の必要性について説いております。

 

ナイトライフエコノミーはキャバクラやダンスクラブのみではなく、それを支える交通、社会人向けの教育産業なども含めた広範なものだというのが、著者の主張です。不動産業界に身を置くものとしては、ここに書かれている「都市部の遊休化(使われていない時間帯がある状態)している不動産を最大限に活用して経済を活性化させるとともに、地域としては固都税の増大としてメリットが出てくる」という主張はわかりやすいものではありました(固都税払うのは不動産オーナーなので、この過程で賃料に跳ねないと意味がないのですが)

ここでは成功例として川崎、渋谷、八戸、中州、シンガポールが挙げられています。

 

一方で地域にメリットを提示できなかったために失敗した神戸、湘南、韓国のような例もあることも示されています。

 

自分としては都バスの山手線内深夜(終電後)運行、ドン・キホーテ稼働率向上策やシンガポールが如何にしてカジノをフックにして街全体に観光客を回遊させているかの取り組みは興味深いものでした。

反面、渋谷の取り組みが著者の言う「稼ぐ観光」にどの程度貢献しているのかがわかりにくかったですね。

 

全体としては不動産視点としても面白く読める本だと思います。

【Review】徳田耕一:名古屋駅物語

 

名古屋駅物語 (交通新聞社新書)

名古屋駅物語 (交通新聞社新書)

 

 名古屋駅周辺の歴史を知りたいと思い手に取ったのですが、とにかく文が読みにくいうえに著者の趣味なのか延々と車両の型式の話をしているので、休み休みでないと読むことができませんでした。

 

名古屋駅は元々広小路川を中心に発展し、その後建て替えで北上していった経緯や、今の太閤口のあたりのドヤ街だった頃の話など断片的に情報は取れたのでそれでよしとしました。

【Review】安田 陽:再生可能エネルギーのメンテナンスとリスクマネジメント

 

 本書は再生可能エネルギー、特に風力発電(一部太陽光発電)に焦点を当てて、事業として風力発電を手掛ける場合のメンテナンスの重要性について説いています。

 

メンテナンスの重要性については不動産においても、アクイジション(取得)とアセットマネジメント(期中管理)との利害の不一致として度々問題になります(アクイジションは想定収支上コストを最小限にしながら運用してみるとその想定では全く回らない)が、風力発電においても事業推進者が事業を予算内でローンチさせるためにメンテナンス費を削減して結果、後の運用に支障をきたす、ということが数多く起こっているということが示されています。

 

一方で新しい業界である再生可能エネルギー業界では、規格の整備も不十分であったり、メンテナンスを行う人材の供給が全く追いついていないという制度や体制側の問題も提起されています。この点については、メンテナンス業は業態上地域密着とならざるをえないので、うまく育てれば地域の雇用を生み出すと感じました。

 

一部では悪名高いFITも新規産業を推進するための補助金として見ると明確に期限が決まっているという点で、従来のなんとなく続いていく補助金よりも優れているという論については新鮮なものでした。

 

再生可能エネルギーにはあまりいいイメージを持っていないのですが、可能性は感じさせる一冊だったと思います。

【Review】特掃隊長:特殊清掃 死体と向き合った男の20年の記録

 

 私はまだ遭遇したことはありませんが、不動産に関わっているとしばしば家で人知れず死んでしまった人の話を聞きます(実際本書にも不動産業の人間はよく出てきます)。

 

遺体があった部屋は物理的にも凄まじい状態になりますが、本書はそれを処理する「特殊清掃」に携わる"特掃隊長"がその仕事のことを淡々と記したものになります。仕事だからやっているというように本当に特掃隊長にとっては日常のこととして書かれています(各章は大体遺体が見つかって依頼が入るところから始まる)

 

病気の娘の余命がわかっていて、それを覚悟し、死んだ時も受け入れることができたが、娘の遺体が1日と経たないうちに腐敗して醜く膨れ上がることは覚悟も受け入れることもできなかった母親の話、いつもと同じように腐乱痕を処理していたら途中でそれが知り合いのものだったわかり、仕事を仕事として処理できなくなってしまった話、自分の恩人が孤独死するのを気づけなかったことを悔やみ、プロが感心するほど腐乱痕を処理していた依頼者の話が印象的でした。

【Review】宮内義彦:私の経営論

 

私の経営論

私の経営論

 

 毀誉褒貶のあるオリックス宮内義彦氏の経営論です。

私が就職活動をしていたころ、オリックスはかなり先進的な企業に見えましたが、十数年の時を経て、著書を読むと思っていたよりも保守的な考えで意外だったのです。

 

投資家(株主)との関係について「外国でのIRに塚らを入れたのは、海外には長期運用の年金基金や、大型投資信託など長い目で運用してくれそうな株主が多くいるように思っていたからです。オリックスの事業を理解して、中長期成長を期待している。それが長期投資につながる。そんな期待をしていましたが、実際はそうではない。」と書いてある箇所が印象的でした。

【Review】阿部 泰隆, 野村 好弘, 福井 秀夫:定期借家権

 

定期借家権

定期借家権

 

 本書は定期借家契約が導入される直前期に、当時の定期借家契約推進派の学者達によって書かれました。

 

これを見ていて面白いのは、導入期にあった(そして今でも散見される)定期借家契約反対派の「定期借家契約は借家人という弱者を困窮させる」という主張に対し「弱者を救済するために定期借家契約を導入する」と主張していることですね。

 

彼らの言う弱者とは「正当事由由来の住宅供給の歪みのために借りたくても借りられない潜在的な借家人(主としてファミリー層)、母子家庭、老人」なので、反対派のいう「弱者」は既得権益者となります。そして、正当事由理論を構築し、定期借家契約には反対していた当時の法務省民法学者も既得権益者に入ります。

 

基本的には推進派の学者たちによって書かれているので、バイアスはあるのですが、民法学者は「もともと公共が担保すべき弱者の住宅確保という福祉政策を、なぜ、地主や大家という私人に負わせ、犠牲にしたまま放置しておくのか」という問いに答えられないので、結局勝てませんでしたね。