【Review】徳田耕一:名古屋駅物語

 

名古屋駅物語 (交通新聞社新書)

名古屋駅物語 (交通新聞社新書)

 

 名古屋駅周辺の歴史を知りたいと思い手に取ったのですが、とにかく文が読みにくいうえに著者の趣味なのか延々と車両の型式の話をしているので、休み休みでないと読むことができませんでした。

 

名古屋駅は元々広小路川を中心に発展し、その後建て替えで北上していった経緯や、今の太閤口のあたりのドヤ街だった頃の話など断片的に情報は取れたのでそれでよしとしました。

【Review】安田 陽:再生可能エネルギーのメンテナンスとリスクマネジメント

 

 本書は再生可能エネルギー、特に風力発電(一部太陽光発電)に焦点を当てて、事業として風力発電を手掛ける場合のメンテナンスの重要性について説いています。

 

メンテナンスの重要性については不動産においても、アクイジション(取得)とアセットマネジメント(期中管理)との利害の不一致として度々問題になります(アクイジションは想定収支上コストを最小限にしながら運用してみるとその想定では全く回らない)が、風力発電においても事業推進者が事業を予算内でローンチさせるためにメンテナンス費を削減して結果、後の運用に支障をきたす、ということが数多く起こっているということが示されています。

 

一方で新しい業界である再生可能エネルギー業界では、規格の整備も不十分であったり、メンテナンスを行う人材の供給が全く追いついていないという制度や体制側の問題も提起されています。この点については、メンテナンス業は業態上地域密着とならざるをえないので、うまく育てれば地域の雇用を生み出すと感じました。

 

一部では悪名高いFITも新規産業を推進するための補助金として見ると明確に期限が決まっているという点で、従来のなんとなく続いていく補助金よりも優れているという論については新鮮なものでした。

 

再生可能エネルギーにはあまりいいイメージを持っていないのですが、可能性は感じさせる一冊だったと思います。

【Review】特掃隊長:特殊清掃 死体と向き合った男の20年の記録

 

 私はまだ遭遇したことはありませんが、不動産に関わっているとしばしば家で人知れず死んでしまった人の話を聞きます(実際本書にも不動産業の人間はよく出てきます)。

 

遺体があった部屋は物理的にも凄まじい状態になりますが、本書はそれを処理する「特殊清掃」に携わる"特掃隊長"がその仕事のことを淡々と記したものになります。仕事だからやっているというように本当に特掃隊長にとっては日常のこととして書かれています(各章は大体遺体が見つかって依頼が入るところから始まる)

 

病気の娘の余命がわかっていて、それを覚悟し、死んだ時も受け入れることができたが、娘の遺体が1日と経たないうちに腐敗して醜く膨れ上がることは覚悟も受け入れることもできなかった母親の話、いつもと同じように腐乱痕を処理していたら途中でそれが知り合いのものだったわかり、仕事を仕事として処理できなくなってしまった話、自分の恩人が孤独死するのを気づけなかったことを悔やみ、プロが感心するほど腐乱痕を処理していた依頼者の話が印象的でした。

【Review】宮内義彦:私の経営論

 

私の経営論

私の経営論

 

 毀誉褒貶のあるオリックス宮内義彦氏の経営論です。

私が就職活動をしていたころ、オリックスはかなり先進的な企業に見えましたが、十数年の時を経て、著書を読むと思っていたよりも保守的な考えで意外だったのです。

 

投資家(株主)との関係について「外国でのIRに塚らを入れたのは、海外には長期運用の年金基金や、大型投資信託など長い目で運用してくれそうな株主が多くいるように思っていたからです。オリックスの事業を理解して、中長期成長を期待している。それが長期投資につながる。そんな期待をしていましたが、実際はそうではない。」と書いてある箇所が印象的でした。

【Review】阿部 泰隆, 野村 好弘, 福井 秀夫:定期借家権

 

定期借家権

定期借家権

 

 本書は定期借家契約が導入される直前期に、当時の定期借家契約推進派の学者達によって書かれました。

 

これを見ていて面白いのは、導入期にあった(そして今でも散見される)定期借家契約反対派の「定期借家契約は借家人という弱者を困窮させる」という主張に対し「弱者を救済するために定期借家契約を導入する」と主張していることですね。

 

彼らの言う弱者とは「正当事由由来の住宅供給の歪みのために借りたくても借りられない潜在的な借家人(主としてファミリー層)、母子家庭、老人」なので、反対派のいう「弱者」は既得権益者となります。そして、正当事由理論を構築し、定期借家契約には反対していた当時の法務省民法学者も既得権益者に入ります。

 

基本的には推進派の学者たちによって書かれているので、バイアスはあるのですが、民法学者は「もともと公共が担保すべき弱者の住宅確保という福祉政策を、なぜ、地主や大家という私人に負わせ、犠牲にしたまま放置しておくのか」という問いに答えられないので、結局勝てませんでしたね。

【Review】一般社団法人日本テレワーク協会:テレワークで働き方が変わる! テレワーク白書2016

 

 本書はテレワーク(情報通信技術(ICT)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方)の啓発と普及を目的としてその意義、事例、課題を紹介したものになります。

 

テレワーク自体は色々と言葉も変えながら、概念自体は2000年代から度々聞くことはありましたが、いまいち定着しないまま今日まで来ているというイメージを持っていました。フリーアドレスも特定の意識の高い大企業に普及している考え方と思っていましたが、本書の事例では従業員数十人の中小企業の事例もあり、自分が思っていたよりも世の中は先に進んでいるのかもしれないと感じさせられました。

 

テレワークの概念、大企業の事例、中小企業の事例、公務員(省庁、地方自治体)、クラウドソーシングなど網羅的に取り上げていますが、決して読みにくいということはない点はよいと思います。

 

一方で、導入にあたっての障害に「セキュリティ」を挙げており、予防策は取り上げているものの実際の事故が起こった場合の対応事例等は全くなく、これで不安を払拭できるとは到底思えない点は残念です。別の障害として挙げられている「粘土層と呼ばれる管理職」はこのようなことも懸念していると思うのですが、事故事例を取り上げないまま粘土層のレイベリングはフェアではありません。

また、立場上仕方ないのかもしれないですが、全般的にテレワークの悪い部分には触れないので、この点も不満に残りました。

 

全体的には興味のある人ならば一読してもよいと思います。

【Review】安能務:封神演義(上)(中)(下)

 

封神演義(上) (講談社文庫)

封神演義(上) (講談社文庫)

 

読んでいてもどうしても昔読んだ藤崎竜版『封神演義』のキャラクターデザインで脳内再生されるにもかかわらず、趙公明も聞仲も割とあっさり退場するなどのギャップが最後まで続きました。

人間側の戦いで終盤、商(殷)の抵抗が若干あるものの、基本的には西岐(周)が商を、闡教が截教をほぼ一方的に殺戮していく話で、出てきた武将や仙人が1ページで登場と退場をくり返す単純作業のような展開が続くので苦痛でした。

これに大幅なアレンジを加えて人気作にした藤崎竜はすごかったんだなというのが、読後もっとも強く湧き出た感想です。

封神演義(中) (講談社文庫)

封神演義(中) (講談社文庫)

 
封神演義(下) (講談社文庫)

封神演義(下) (講談社文庫)

 
封神演義 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

封神演義 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)