【Review】水口剛:ESG投資 新しい資本主義のかたち

 

ESG投資 新しい資本主義のかたち

ESG投資 新しい資本主義のかたち

 

 GPIFの動向に引っ張られるような形で、本邦でも「ESG投資」という言葉を目にすることが増えてきました。職務上これに絡むことが増えてきているものの何のために取り組んでいるのかわからなくなるので、一度落ち着いて学ぼうと思って手に取った一冊になります。

 

長期投資を中心とする投資家は持続可能な社会を残すことが結果的に長期的なパフォーマンスの向上になる(からESG投資に取り組むのだ)、というのは嘘か本当かわからないですが、対外的な説明として使うには悪くないフレーズかなと感じました。

 

各論の方では温暖化についてはカーボンフットプリントあたりは日本の省エネ法に割と近い考え方に見えるので、すんなり入ってきますし、強制労働の撲滅などは意義はわかるのですが、動物の権利などの項目になるとよく理解の出来ない倫理観が押し出されているので、意義を見出しにくいものだと感じました。

【Review】エイミー・C・エドモンドソン:チームが機能するとはどういうことか ― 「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ

 

本書は「チーミング(=新たなアイディアを生み、答えを探し、問題を解決するために人々を団結させる働き方)」をキーワードにこれからの時代にあるべき組織(「学習する組織」)を論じています。

 

チーミングを構成する様々な構成要素が説明されていますが、特に印象深かったのはチーミングに必要なリーダーシップの一つとしてとして挙げられている「心理的に安全な場所をつくる」で、これがないと最も情報を持っているが、最も疑いの心を持っている地位が低い人たちは機能しない、ということが繰り返し論じられています。

 

心理的に安全な場所を作るために必要な行動として、「直接話の出来る、親しみやすい人になる」「現在持っている知識の限界を認める」「自分もよく間違うことを積極的に示す」「参加を促す」「失敗は学習する機会であることを強調する」「具体的な言葉を使う」「境界を設ける」「境界を越えたことについてメンバーに責任を負わせる」ということが挙げられています。

確かに実体験としてもこれらができない中間管理職がいるチームは完全に機能不全になっていましたので、納得感のあるところでした。

 

本書になる「学習する組織」はそれ自体、ある程度組織に余力がないと構築できないものだとは思いますが、実務はできない割に妙な万能感に満たされた50代の管理職に読んでもらいたいものです。

 

【Review】首都圏鉄道路線研究会:沿線格差 首都圏鉄道路線の知られざる通信簿

 

 本書は首都圏のJR、私鉄、地下鉄の歴史と属性を数ページずつ淡々と解説していくというスタイルの本です。首都圏にいても普段使わない路線のことは意外と知らないので、そういった路線の簡単な成り立ちを知るにはいいのですが、扱っているデータの比較があまり意味のないものだったり京浜東北線などの主要路線が取り上げられていなかったりして内容的にはあまり濃密なものではなかったです。

 

kindle版がセールの時に安ければ暇つぶしに読むような感じになると思います。

【Review】岩中祥史:名古屋の品格

 

名古屋の品格

名古屋の品格

 

 本書は2000年代後半に書かれたものなので、今の名古屋とは違うところはあるかもしれないと思いつつAmazonのセール対象だったために買って読んでみました。

 

全般的に「~に違いない」という言い回しに代表される著者の思い込みが目立ちこれが本当に実態を表しているのかよくわからない面は多分にあるものの名古屋出身者が名古屋に抱くイメージも投影されていると思われるので、割り切って読むことはできました。また、昔ながらの喫茶店、名古屋の人の夜は早いなど実感できる点もありました。

 

「花泥棒」「土俵泥棒」「ギフトセット解体バーゲン」というのはまったく聞いたことがなかったので、変わった風習だとちょっと驚きました(本当にあるのかわかりませんが)

 

名古屋財界の五摂家中部電力名古屋鉄道松坂屋東邦ガス、旧東海銀行)の中に岡谷鋼機が入ってないのは意外でした。

 

 

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【Review】渡邉 正裕:35歳までに読むキャリア(しごとえらび)の教科書 就・転職の絶対原則を知る

 

 本書は、折に触れて読み返していた本なのですが、先日『ゆとり世代はなぜ転職をくり返すのか?-キャリア思考と自己責任の罠』を読んで、久々に引っ張り出してきました。

 

自己責任を求められた90年代後半~2000年代前半の所謂氷河期世代が問題化していた頃の著作なので「普通の人が国にも社会にも頼らず、どのようにキャリア形成していくか」という話になっています。したがって全体的に感じ取れるのは国のことも社会制度のことも全く信じていないこと(利用できるものはする)というスタンスです。

 

その中で「まず働く動機(やりたいこと)を明確化していく。その動機を明確化していって出てきた選択肢から自分の能力(できること)にあったものを選んでいく。これを35歳までに完了させる」ことを提唱します。『ゆとり世代は~』では「できることを中心としたキャリア選び」を提案していましたが、これについては(出版された時系列は逆ですが)「動機が追いつかないキャリア形成は精神と肉体の破綻を招く」と批判的です。私は世代的なものもありますが『ゆとり世代は~』は解決策を提示しているようで特に新しいものはなかったと思っていますので、本書の方が今でも実践的だと感じます。

 

著者の渡邉氏はネット上ではタクシー渡邉とも言われ、しばしばクセのある論者と見做され、政治的主張の中にも首をかしげるものはありますが、キャリア論については普通の人にとって実践性の高いものだと思います。

 

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【Review】東京都総務局総合防災部防災管理課:東京防災

 

東京防災

東京防災

 

 東京都内の各世帯に配布されたので、都内在住の方は持っているはずのものですが、kindle版は無料で入手できますので、ダウンロードしてみました。

 

災害といわれると日本人が恐らく最初に思い浮かべるであろう地震に多くのページが割かれているのみならず、家庭での備え、オフィスでの備えと言ったシチュエーション別、洪水、火山噴火と言った災害種別など多岐に渡る災害を網羅しています(テロ攻撃、武力攻撃というものまであります)

 

340ページの本を一気に覚えることも、一字一句覚えこむことも現実的ではないので、普段は気の向いた時間のある時に2~3ページ読むとかそういう使い方がいいのではないでしょうか。また何かあった時にマニュアルとして持ち運ぶことを考えれば、バッテリーの供給が続く限り気軽に持ち運べるkindleは本書の目的と相性がいいのではないでしょうか。そういう意味ではkindle向きの本だと思います。

【Review】福島創太:ゆとり世代はなぜ転職をくり返すのか?──キャリア思考と自己責任の罠

 

 タイトルの通り本書はおもに2017年時点で20代後半~30歳くらいまでのゆとり世代に近い方々のキャリアについて論じています。

 

自分のキャリアに忠実な「意識高い系」と自分の感情に忠実な「ここではないどこか系」に分けてその長所、そして危うさを論じているわけですが、ジェネレーションギャップのせいか、世代的に自己責任に慣らされそれに疑問を感じなくなっているせいかどうも甘いこと言っているばかりだという印象です。

 

「したいこと」から「できること」を中心のキャリア形成を、という提言ですが、「したいこと」中心のキャリア形成の時に自分が今何をできるのかというのは当然考慮の要素に入っているので、いまさらこんなことを言われたところで何の解決になるのかという感想しか出てきませんでした。

 

論については以上ですが、キャリアアドバイザーと求職者が問答している章があって、これは客体として見る機会がないのでなかなかよかったですね。