【Review】石野 雄一:ざっくり分かるファイナンス~経営センスを磨くための財務~

 

ざっくり分かるファイナンス?経営センスを磨くための財務? (光文社新書)

ざっくり分かるファイナンス?経営センスを磨くための財務? (光文社新書)

 

本書はファイナンスについて諸学者向けに書かれた本ですが、ここで最初に強調されているのは会計(アカウンティング)とファイナンスは違うものだということです。外から見ていると似たようなことをやっているように見えますが、確かに狭い職場を見ているだけでも会計部門と財務部門は分かれていて話は完全に一致しているようには思えません。

 

読み進めていくと「欧米には経常利益という概念がない(本当?)」とか「無借金経営は債権者の発想であって株主の発想ではない」と言った印象的な言葉が出てきます。今まで読んだ所謂「財務諸表の本」と違って資本コストについても割合を割くなど、力点が確かに会計の本とは違いますね。

【Review】坂本 剛:知識ゼロから決算書が30分でわかる本

 

 決算書の読み方については多くの本が出版されていますが、本書は学生なども念頭に置きながら「Yahoo!ファイナンス」を活用して企業の特徴を簡便に知ることができるようになる、ということを一つのベンチマークにしている点が特徴となっております。

 

また、決算書の読み方、というとどうしても「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」に偏りがちですが、本書では上に挙げた「Yahoo!ファイナンス」→「決算短信」→「有価証券報告書」という情報の取り方のフローを示してくれているのがよかったです。「決算短信」の使い方がいまいちよくわからなかったので、その使い方とそれが総合的に見て最も重視されるべき資料という知見が得られました。

【Review】Testosterone:マッチョ社長のお悩み相談室 すべての悩みは筋トレで解決できる

 

筋トレのノウハウについていつまで経っても出てこないなぁと思っていたら、悩み相談の本だったようなので、求めていたものとはちょっと違う本でした。

最近、ゼリア新薬工業の社員が精神を病んで自殺した事件に関連して、社員の方が筋トレをしていたにも関わらず自殺した、ということで Testosterone氏が少し叩かれていました。

本書を読む限りでは筋トレ万能と言いつつも「6時間の睡眠と1時間の趣味の時間を取れないような仕事は辞めてもいい」などの話もしているので、筋トレ万能にはいくつかの暗黙の前提があって、それを勘違いすると不幸な結果になるんだろうな、と思いました。

私が持っている「筋トレしようと思ったもついつい有酸素運動に走ってしまう」に近い悩みがなかったのが残念ですね。

【Review】山根 節:「儲かる会社」の財務諸表~48の実例で身につく経営力・会計力~

 

 本書は発行当時話題の会社やその同業他社について具体的な数字を出しながら、財務諸表からわかる違いについて解説してくれています。それほど難しい数字を出しているわけではありませんが、48個の具体例を手軽に触れられる点とBSとP/Lの「大きさ」を可視化して全容を把握するという手法は自分が今まで読んだ類書にはなかったものでした。

【Review】大石幸紀:図解 会社の数字 基本と常識

 

図解 会社の数字 基本と常識

図解 会社の数字 基本と常識

 

 『オールカラー “ギモン”から逆引き! 決算書の読み方 オールカラーでわかりやすい!』と同じく会社の数字についての入門書です。『ギモン”から逆引き』は最初に想定されるパターンを提示してそれについて解説するスタイルですが、こちらは割と順を追って説明をしていく体裁となっています。

 

見開き1ページで1トピック説明するので、電車の中でも抵抗なく読むことができました。少しずつ慣れていければいいですね。

 

 

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【Review】森島義博,日本プロパティソリューションズ:ビルオーナーのための建物・設備バリューアップ入門

 

ビルオーナーのための建物・設備バリューアップ入門

ビルオーナーのための建物・設備バリューアップ入門

 

 本書は三菱UFJ信託銀行系のプロパティマネジメント(PM)会社日本プロパティソリューションズが2000年代に発行したいくつかのPM業務に関する本の一つですが、その中でもバリューアップに焦点を当てています。

 

本書が発行された2006年初頭はプロパティマネジャーに求められる業務領域がようやくはっきりしかけてきた時期だったので、PM全般ではなく、こういった特定の話題を取り上げた本が出たりしていました。

 

10年経ってさすがに書かれている要求設備水準は古くなってきているもののどのようにバリューアップを考えて行けばいいのかという考えを整理するのに(特に前半は)いいかと思います。ただ、個別の設備や建築項目に言及しているわけではないので、あくまで考え方を整理、という使い方です。

 

・「競合相手にいかに『僅差で勝つか』」がメインテーマ

・バリューアップは、条件面で競合するビルとあなたのビルを比較し、費用対効果を考えて「既存テナントの維持または新規のテナント確保に最大の効果をあげると思われる部分にだけ、必要最小限の設備投資を行う」ということをベースとしましょう

 

という言葉は『不動産アセットマネジメント』でも触れられていましたが、いつでも忘れないようにしたいですね。

 

 

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【Review】奥野信宏, 黒田昌義:リニア新世紀 名古屋の挑戦

 

リニア新世紀 名古屋の挑戦

リニア新世紀 名古屋の挑戦

 

 「本書は、リニア中央新幹線の建設に伴う名古屋駅周辺開発をはじめとする名古屋のまちづくり行政に携わっている筆者が立ち上げたプロジェクト研究会等において有識者の先生方と議論した成果をまとめたものである」とあとがきに書かれているように2027年に予定されている品川~名古屋間リニア中央新幹線開通に向けた名古屋のまちづくりに関する政策提言です。

 

名古屋のまちづくりを支援するシンクタンクの責任者と国土交通省の役人が書いた本なので、お堅いかというと3時間もあれば読めてしまうような平易な文章で、かつ、現実を見据えた内容となっています(名古屋の盛り上がりにあてられているテンションではありますが)

 

リニア開通によって出現する「スーパー・メガリージョン」を名古屋がどう活かしていくか、万年三位だった中部圏が関西圏を抜き、東京圏を使う(使われる)時代が来たのだという希望に燃える調子が特徴的です。関西圏までリニアが延伸するまでが名古屋の最大のチャンスだというのが印象的です。

 

一方、一応新幹線で起こったようなストロー現象などの懸念は出されてはいますが、基本的には楽観的な論調なので、この辺りはもう少し深堀してほしかったですね。あとは現時点で言っても仕方ないのですが、リニア乗車に伴うコストの話が出ていないので、通勤圏に関する話は少し眉唾ですね。

 

名古屋の現状の課題も出されているので、今の名古屋を名古屋以外の人間が手軽に知るのにも使えますので、全体としてはお得感はある一冊でした。

 

 

www.nup.or.jp