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【Review】竹沢 えり子:銀座にはなぜ超高層ビルがないのか: まちがつくった地域のルール
銀座にはなぜ超高層ビルがないのか: まちがつくった地域のルール (平凡社新書)
- 作者: 竹沢えり子
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2013/11/19
- メディア: 新書
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本書は今のGINZA SIXの計画が持ち上がったことをきっかけに危機感を抱いた地元銀座が所謂「銀座ルール」を今の形に作り上げていった経緯を銀座の歴史と特性を説明しながら記したものになります。
銀座のイメージは「昔からの固定的な地主が代々相続して事業や不動産業を営んでいる街」というものでしたが、意外にも明治煉瓦街、関東大震災、大東亜戦争の際にそれぞれ半分ほど入れ替わっている新陳代謝の激しいものだという点です。これは普段の銀座のイメージにはありませんでした。
銀座街づくり会議については、著者は「お白洲に並ばされ旦那衆に頭を下げて許諾を得るようなイメージ」ではないと言いますが、一方で「銀座まちづくり活動の中心メンバーとして、大企業の社員たちが活躍する日も、いつかきてしまうのだろうか」という排他性というか選民意識というか、そういうものも見え隠れして鼻につく面はあります。
【Review】NHKスペシャル取材班:キラーストレス 心と体をどう守るか
本書はNHKスペシャルで放映された『NHKスペシャル「シリーズ キラーストレス」』での取材をもとに書き起こされた新書になります。
本書ではストレスとは、よいものであるにせよ、悪いものであるにせよ「変化」であると定義しており、生きている限りストレスはついて回るとしています。そして、ストレスを受けることによって生じる脳(偏桃体など)の変化が体に変調をもたらすとしています。上司との緊張関係にさらされていると常にストレスホルモンが分泌されている状態が例として取り上げられています。また子供時代のいじめがストレスとなり、脳の発達に影響を及ぼす例も紹介されています。
昔から何となく言われてきたことが脳に起こる現象として説明されています。
このようなストレスへの対策としては①ストレスの原因を避ける ②笑い ③友人や家族のサポートを得る ④運動 ⑤瞑想が挙げられています。また、ストレスがかかった時に備え「ステーキの写真を眺める」のレベルでいいのでたくさんの気晴らしリストを作っておくことも推奨されています。さらに、これらとは別のアプローチとして最近聞かれるようになった「マインドフルネス」の説明もあります。
支配的な上司の下にいることが常態化しているような状態の人はストレス対策を行うこと自体が既に難関だという現実があるはずなので、知らないよりは知っていた方がいいこともあるかもしれない、というレベルにとどまるような気がするのもまた実感です。
【Review】中嶋康博 他:工場見学がファンをつくる ―実施ノウハウと評価方法
自社のProperty(工場)をどのように見学させているのかという珍しい題材を扱っています。滋養の工場ではありませんが、Propertyを扱う仕事をしている立場として興味があったので、手に取ってみました。
工場見学の目的を「自社のファンをつくること」としており、ここまではよくある話なのですが、「ファン」というフワッとした用語を丁寧に定義していき、その定義に沿ったアンケートを作り、調査し、効果測定をしていくという流れが細かく解説されています。なので、一種の顧客満足度調査の事例を一冊にまとめた本と言えます。
この事例はかなり投資も人材も投入しており、なかなかまねできるものではありませんが、このような調査を具体例をもって解説してくれている資料は少ないのでその意味で非常に貴重だと思いました。
【Review】D・カーネギー:新訳 道は開ける
【Review】水口剛:ESG投資 新しい資本主義のかたち
GPIFの動向に引っ張られるような形で、本邦でも「ESG投資」という言葉を目にすることが増えてきました。職務上これに絡むことが増えてきているものの何のために取り組んでいるのかわからなくなるので、一度落ち着いて学ぼうと思って手に取った一冊になります。
長期投資を中心とする投資家は持続可能な社会を残すことが結果的に長期的なパフォーマンスの向上になる(からESG投資に取り組むのだ)、というのは嘘か本当かわからないですが、対外的な説明として使うには悪くないフレーズかなと感じました。
また主なESG投資の手法
①ポジティブスクリーニング(インデックスなどを使用し、投資対象を絞り込む)
②インテグレーション (財務分析にESG要素を織り込む)
③ダイベストメント(特定の企業を投資対象から外す)
④エンゲージメント(株主としての影響力を発揮し改善を促す)
の紹介もされています。ESG投資というとダイベストメントが話題になりますが、基本的にはエンゲージメント的なものの方が有効だという議論も同時に紹介されています。
細かい話では温暖化についてはカーボンフットプリントあたりは日本の省エネ法に割と近い考え方に見えるので、すんなり入ってきますし、強制労働の撲滅などは意義はわかるのですが、動物の権利などの項目になるとよく理解の出来ない倫理観が押し出されているので、意義を見出しにくいものだと感じました。
ESG投資に関する書籍は現状ではほとんどないため、とりあえず手に取る一冊としてお勧めだと思います。
【Review】エイミー・C・エドモンドソン:チームが機能するとはどういうことか ― 「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ
チームが機能するとはどういうことか ― 「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ
- 作者: エイミー・C・エドモンドソン
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2014/09/05
- メディア: Kindle版
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本書は「チーミング(=新たなアイディアを生み、答えを探し、問題を解決するために人々を団結させる働き方)」をキーワードにこれからの時代にあるべき組織(「学習する組織」)を論じています。
チーミングを構成する様々な構成要素が説明されていますが、特に印象深かったのはチーミングに必要なリーダーシップの一つとしてとして挙げられている「心理的に安全な場所をつくる」で、これがないと最も情報を持っているが、最も疑いの心を持っている地位が低い人たちは機能しない、ということが繰り返し論じられています。
心理的に安全な場所を作るために必要な行動として、「直接話の出来る、親しみやすい人になる」「現在持っている知識の限界を認める」「自分もよく間違うことを積極的に示す」「参加を促す」「失敗は学習する機会であることを強調する」「具体的な言葉を使う」「境界を設ける」「境界を越えたことについてメンバーに責任を負わせる」ということが挙げられています。
確かに実体験としてもこれらができない中間管理職がいるチームは完全に機能不全になっていましたので、納得感のあるところでした。
本書になる「学習する組織」はそれ自体、ある程度組織に余力がないと構築できないものだとは思いますが、実務はできない割に妙な万能感に満たされた50代の管理職に読んでもらいたいものです。