【Review】一般社団法人日本テレワーク協会:テレワークで働き方が変わる! テレワーク白書2016
テレワークで働き方が変わる! テレワーク白書2016 (NextPublishing)
- 出版社/メーカー: インプレスR&D
- 発売日: 2016/03/24
- メディア: Kindle版
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本書はテレワーク(情報通信技術(ICT)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方)の啓発と普及を目的としてその意義、事例、課題を紹介したものになります。
テレワーク自体は色々と言葉も変えながら、概念自体は2000年代から度々聞くことはありましたが、いまいち定着しないまま今日まで来ているというイメージを持っていました。フリーアドレスも特定の意識の高い大企業に普及している考え方と思っていましたが、本書の事例では従業員数十人の中小企業の事例もあり、自分が思っていたよりも世の中は先に進んでいるのかもしれないと感じさせられました。
テレワークの概念、大企業の事例、中小企業の事例、公務員(省庁、地方自治体)、クラウドソーシングなど網羅的に取り上げていますが、決して読みにくいということはない点はよいと思います。
一方で、導入にあたっての障害に「セキュリティ」を挙げており、予防策は取り上げているものの実際の事故が起こった場合の対応事例等は全くなく、これで不安を払拭できるとは到底思えない点は残念です。別の障害として挙げられている「粘土層と呼ばれる管理職」はこのようなことも懸念していると思うのですが、事故事例を取り上げないまま粘土層のレイベリングはフェアではありません。
また、立場上仕方ないのかもしれないですが、全般的にテレワークの悪い部分には触れないので、この点も不満に残りました。
全体的には興味のある人ならば一読してもよいと思います。
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【Review】竹沢 えり子:銀座にはなぜ超高層ビルがないのか: まちがつくった地域のルール
銀座にはなぜ超高層ビルがないのか: まちがつくった地域のルール (平凡社新書)
- 作者: 竹沢えり子
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2013/11/19
- メディア: 新書
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本書は今のGINZA SIXの計画が持ち上がったことをきっかけに危機感を抱いた地元銀座が所謂「銀座ルール」を今の形に作り上げていった経緯を銀座の歴史と特性を説明しながら記したものになります。
銀座のイメージは「昔からの固定的な地主が代々相続して事業や不動産業を営んでいる街」というものでしたが、意外にも明治煉瓦街、関東大震災、大東亜戦争の際にそれぞれ半分ほど入れ替わっている新陳代謝の激しいものだという点です。これは普段の銀座のイメージにはありませんでした。
銀座街づくり会議については、著者は「お白洲に並ばされ旦那衆に頭を下げて許諾を得るようなイメージ」ではないと言いますが、一方で「銀座まちづくり活動の中心メンバーとして、大企業の社員たちが活躍する日も、いつかきてしまうのだろうか」という排他性というか選民意識というか、そういうものも見え隠れして鼻につく面はあります。
【Review】NHKスペシャル取材班:キラーストレス 心と体をどう守るか
本書はNHKスペシャルで放映された『NHKスペシャル「シリーズ キラーストレス」』での取材をもとに書き起こされた新書になります。
本書ではストレスとは、よいものであるにせよ、悪いものであるにせよ「変化」であると定義しており、生きている限りストレスはついて回るとしています。そして、ストレスを受けることによって生じる脳(偏桃体など)の変化が体に変調をもたらすとしています。上司との緊張関係にさらされていると常にストレスホルモンが分泌されている状態が例として取り上げられています。また子供時代のいじめがストレスとなり、脳の発達に影響を及ぼす例も紹介されています。
昔から何となく言われてきたことが脳に起こる現象として説明されています。
このようなストレスへの対策としては①ストレスの原因を避ける ②笑い ③友人や家族のサポートを得る ④運動 ⑤瞑想が挙げられています。また、ストレスがかかった時に備え「ステーキの写真を眺める」のレベルでいいのでたくさんの気晴らしリストを作っておくことも推奨されています。さらに、これらとは別のアプローチとして最近聞かれるようになった「マインドフルネス」の説明もあります。
支配的な上司の下にいることが常態化しているような状態の人はストレス対策を行うこと自体が既に難関だという現実があるはずなので、知らないよりは知っていた方がいいこともあるかもしれない、というレベルにとどまるような気がするのもまた実感です。
【Review】中嶋康博 他:工場見学がファンをつくる ―実施ノウハウと評価方法
自社のProperty(工場)をどのように見学させているのかという珍しい題材を扱っています。滋養の工場ではありませんが、Propertyを扱う仕事をしている立場として興味があったので、手に取ってみました。
工場見学の目的を「自社のファンをつくること」としており、ここまではよくある話なのですが、「ファン」というフワッとした用語を丁寧に定義していき、その定義に沿ったアンケートを作り、調査し、効果測定をしていくという流れが細かく解説されています。なので、一種の顧客満足度調査の事例を一冊にまとめた本と言えます。
この事例はかなり投資も人材も投入しており、なかなかまねできるものではありませんが、このような調査を具体例をもって解説してくれている資料は少ないのでその意味で非常に貴重だと思いました。