【Review】三菱信託銀行不動産コンサルティング部,日本プロパティソリューションズ:ビルオーナーのためのプロパティ・マネジメント入門

 

ビルオーナーのためのプロパティ・マネジメント入門

ビルオーナーのためのプロパティ・マネジメント入門

 

 本書は、不動産証券化黎明期、アンバンドリングと呼ばれて不動産にかかわる各機能が分かれていく過程でプロパティ・マネジメント(PM)という言葉が出て定着しつつあったころにその業務の内容を概説したものになります。

 

そもそも不動産といってもオフィスビル系の書籍というのは非常に少なく、中でもPMという比較的裏方的な仕事の解説書というのはほとんどなかったので、2000年代半ばくらいの若手プレイヤーで読んでいる人は結構見ました。

 

出版から10年以上経った今でも、やや時代を感じさせる部分はありますが、PMの基本的流れについては120ページくらい(120ページ以降の鑑定評価の説明は蛇足)で把握できる「入門書」となっています。日本プロパティソリューションズ(JPS)は三菱(UFJ)信託銀行系のPM会社で記述の信頼性も高いです。

 

一方で、「理想的な管理運営体制」「人材の在り方」というのが今から見ると強く出すぎている感があって、フィーの低下化から疲弊して久しいように思える現在の状況と比べると違和感を覚えます。

 

「プロパティ・マネジャーはまず、テナントリーシング、会計、ファイナンス、建物維持管理、不動産に関する法、契約実務、保険等の実務所上の基礎知識を一通り持つ必要があります」

「あわせて、経済環境と企業動向、業種ごとの景気動向機関投資家の投資動向等、よりマクロ的な視点からの分析を常に怠らないことも必要」

「基礎知識があるのは前提として、それに基づいた豊かなコミュニケーション能力、多くの経験によって高めていくことが必要」

 

スーパーマンを求めているわけではない、とは断っているけど、これを一通りこなせる人材はPM会社には留まっていないでしょう…