【Review】オフィスビル総合研究所「ベースビル研究会」:新 次世代ビルの条件

 

新 次世代ビルの条件

新 次世代ビルの条件

 

 本書は今から10年前に「次の時代に社会・経済・人間が求めるオフィスビルはどのようなものか」というテーマで、出版されました。

 

テーマがテーマなので、実務に直結するような知識が得られるわけではないですが、1つあたり4~5ページでまとめられているトピックは建築、設備、投資、管理、環境、FM等多面的な視点で設けられているので、ある程度実務を経験された方なら、気づきが持てるような構成になっています。オフィスビル総合研究所は三幸エステートの関連会社ではありますが、それほど市場性偏重という感じではなくて、むしろその話題は少ないくらいです。

 

10年経ってみてこの中で言われていることの中ではシステム天井や環境系(環境規制)の話あたりは概ね書かれているような展開にはなっています。逆に本書が全編にわたって推しているスケルトン・インフィルについてはまったく主流にならないまま現在に至っています。

個人的には「LCCを考えたら、設備には特注品を使用するのは避けるべきだ」という主張には特注品だらけの物件を管理した経験から非常に強く共感します。

 

2014年に続編となる『オフィスビル2030=-近未来ーオフィスビルは必要か?』も出版されているので、どのようにスタンスが変わったのか見てみるにもよいかと思います。いずれにせよ、落ち着いた時間のある時に読むべき本です。