【Review】植野 正美:アメリカビル物語―プロパティマネジメント奮戦記

 

アメリカビル物語―プロパティマネジメント奮戦記

アメリカビル物語―プロパティマネジメント奮戦記

 

 「本書は、プロパティマネジメント(不動産物件管理)のサクセスストーリーである」と冒頭で述べられている通り、不況下に竣工してしまったシアトルのビル(U.S. Bank Centre)を不動産のことなど何もわからないH社(ハザマ)の社員が立て直すという読み物風の本となっています。この文体はちょっと鼻につきます。

 

90年代半ばのシアトルが舞台なので、今から見ると20年前のアメリカの話なのですが、現代の日本と比べてみるという感じの軽い読み方をするのがいいのではないかと思います。

 

当時としてはトロフィーアセットというためか、新PM会社のLP社(ラサールパートナーズ)の担当チームが非常に潤沢で羨ましくなりました。今の日本のPM会社だと10万㎡級の物件でも意外と貧弱な陣容でまわしているケースも見受けられます。

また、人件費はPMフィーとは別建てでオーナーに請求できるというのは日本のPMが当初とはずいぶん違うものになっている要因であると思いました(アメリカは管理費が実費ということとのセットだと思いますが)

そしてオーナーがテナント内装費を負担するという慣習も日本でいう定期借家契約に基づく確定的で予測しやすい収益構造とのセットなのだと感じさせられます。未だに普通借家契約の日本では根付かないでしょう。

 

エピソードとしては清掃係にユニフォームを支給して士気と連帯感を高めたという話が好きです。

 

U.S. Bank Centreを検索してみたらCBREによるHPが出てきました。

www.usbankcentre.com