【Review】奥野信宏, 黒田昌義:リニア新世紀 名古屋の挑戦

 

リニア新世紀 名古屋の挑戦

リニア新世紀 名古屋の挑戦

 

 「本書は、リニア中央新幹線の建設に伴う名古屋駅周辺開発をはじめとする名古屋のまちづくり行政に携わっている筆者が立ち上げたプロジェクト研究会等において有識者の先生方と議論した成果をまとめたものである」とあとがきに書かれているように2027年に予定されている品川~名古屋間リニア中央新幹線開通に向けた名古屋のまちづくりに関する政策提言です。

 

名古屋のまちづくりを支援するシンクタンクの責任者と国土交通省の役人が書いた本なので、お堅いかというと3時間もあれば読めてしまうような平易な文章で、かつ、現実を見据えた内容となっています(名古屋の盛り上がりにあてられているテンションではありますが)

 

リニア開通によって出現する「スーパー・メガリージョン」を名古屋がどう活かしていくか、万年三位だった中部圏が関西圏を抜き、東京圏を使う(使われる)時代が来たのだという希望に燃える調子が特徴的です。関西圏までリニアが延伸するまでが名古屋の最大のチャンスだというのが印象的です。

 

一方、一応新幹線で起こったようなストロー現象などの懸念は出されてはいますが、基本的には楽観的な論調なので、この辺りはもう少し深堀してほしかったですね。あとは現時点で言っても仕方ないのですが、リニア乗車に伴うコストの話が出ていないので、通勤圏に関する話は少し眉唾ですね。

 

名古屋の現状の課題も出されているので、今の名古屋を名古屋以外の人間が手軽に知るのにも使えますので、全体としてはお得感はある一冊でした。

 

 

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