【Review】安田 陽:再生可能エネルギーのメンテナンスとリスクマネジメント

 

 本書は再生可能エネルギー、特に風力発電(一部太陽光発電)に焦点を当てて、事業として風力発電を手掛ける場合のメンテナンスの重要性について説いています。

 

メンテナンスの重要性については不動産においても、アクイジション(取得)とアセットマネジメント(期中管理)との利害の不一致として度々問題になります(アクイジションは想定収支上コストを最小限にしながら運用してみるとその想定では全く回らない)が、風力発電においても事業推進者が事業を予算内でローンチさせるためにメンテナンス費を削減して結果、後の運用に支障をきたす、ということが数多く起こっているということが示されています。

 

一方で新しい業界である再生可能エネルギー業界では、規格の整備も不十分であったり、メンテナンスを行う人材の供給が全く追いついていないという制度や体制側の問題も提起されています。この点については、メンテナンス業は業態上地域密着とならざるをえないので、うまく育てれば地域の雇用を生み出すと感じました。

 

一部では悪名高いFITも新規産業を推進するための補助金として見ると明確に期限が決まっているという点で、従来のなんとなく続いていく補助金よりも優れているという論については新鮮なものでした。

 

再生可能エネルギーにはあまりいいイメージを持っていないのですが、可能性は感じさせる一冊だったと思います。