【Review】白川克 :会社のITはエンジニアに任せるな!

 

会社のITはエンジニアに任せるな!

会社のITはエンジニアに任せるな!

 

 IT投資は重要すぎるのでITエンジニアに丸投げしていい問題ではないのと同時にITエンジニアだけで対処できる問題ではないことを説いた本になります。

 

企業が使うITには「ツール型IT(その時々で最適な道具として使いこなせるようなIT。例:メール、プリンター複合機)」と「プラント型IT(「ツール」と呼ぶにはあまりに複雑で会社の業務そのものと密着したIT)」があり、両者が全く違うものであることを説明し、企業にとって重視すべきは後者だとします。そして、プラント型ITはそのよしあしが企業の生産性に直結するにもかかわらずあまり重要視されていないというのがその主張です。

 

プラント型ITは業務と密着しているがゆえに業務とデータのすり合わせを地道にする必要がありますが、そのためには最初の設計思想、将来業務の構想が重要となってきます。また、技術的な問題よりも「従業員の反対」「中間管理職のコミットメント不足」「組織の壁」「作るものが決まっていないのに金額をコミットさせられる」という問題の方が事態を難しくします。こうして経営幹部・業務担当者とITエンジニアの断絶が発生していきます。

 

この、業務とともに長期的に育てていく「プラント型IT」という考え方は有用で、日本の不動産テックと呼ばれている企業が業界に革命を起こす、と言いながらその後鳴かず飛ばずになっていくのは、多様性に過ぎる不動産業者の業務が本来なら「プラント型IT」と親和性があるにもかかわらず、その手間を惜しんで「ツール型IT」で解決しようとしていることになるのではないかと考えさせられました。