【Review】田中 智仁:警備ビジネスで読み解く日本

 

警備ビジネスで読み解く日本 (光文社新書)

警備ビジネスで読み解く日本 (光文社新書)

 

 ビル賃貸業に携わっていると避けて通れないですが、いまいちわかりづらい「警備業」。本書はその警備業の法的根拠、歴史、課題などをわかりやすく論じています。

 

日本における警備業は「守衛の系譜」、「寄せ場の系譜」、「幡随院長兵衛に代表されるヤクザの系譜」が絡み合った存在であると論じています。警備業が実態に反して楽な仕事と思われやすいのは「守衛の系譜」、工事現場に人を送るのは「寄せ場の系譜」を引き継いでいることの反映と理解されるべきという解説されます。

 

個人的には現在警察にべったりでその天下り先という側面を持つ警備会社が、もともと荒くれ者たちの集団だったためにどの官庁も管轄したくないために警察に押し付けられたという話、「警備保障」というのは「警備業務を行うだけでなく、それに保険のサービスを付加した仕組み」という警備業との区別、機械警備業務とビルなどの施設にあるローカルシステムは明確に違うものであるという話が学びでした。

 

また、アイドルの握手会イベントは「施設警備(手荷物検査等出入管理)」「雑踏警備(来場者誘導)」「身辺警備(アイドルを守る)」という全く違う警備業務の束なので、厳密に運用する(業務別教育をしていく)と警備費が増大して中止になる可能性するすらあるという話も考えさせられるものでした。