【Review】金 惺潤: 不動産投資市場の研究―1992年から2011年の市場変遷と投資行動の二十年史

『不動産の価格がわかる本』は不動産業界に入った2~3年目くらいの若手社員が読むのに良い本だなぁ、と思ったのですが、同じような感想を抱いたのはこの本になります。

 

もう4年も前の著作ということに驚くんですが、バブル崩壊からリーマンショック経た仁保貸し日本大震災までの20年の不動産投資市場の歴史が丁寧に記述されています。当時業界にいた人ならば、どこかでかかわりのあったプレイヤーも登場すると思います。

 

私は当時、不動産賃貸市場のプレイヤーとして活動していたので、直接的な当事者かというと少し微妙なんですが、同僚や同期が転職していたり、取引先にもこの本に出てくるプレイヤーはいたりしました。

 

どのように不動産投資市場が盛り上がり、どのように崩壊していったのか。早いものでこの本のラスト(2011年)から既に6年が経ちました。我々が秀和のことをよく知らないようにダヴィンチアドバイザーズのことをよく知らないという世代も出てきているでしょう。

少々値は張る本ですが、そんな世代がこの2~3年の不動産市場を見るために、旧世代の人たちがどんな道のりを歩んだのか。それを知る目的で読むのに損のない本だと思います。

 

 

 

【Review】 クリス・ディノーヴィ、J.D.パワーIV世:J.D.パワー 顧客満足のすべて

J.D.パワーはもともとアメリカの顧客満足度調査会社で、日本の不動産業界だとケネディクスオフィス投資法人がテナント満足度調査を実施するときに起用している企業でもあります。

 

顧客満足の追求というと、現在の日本だと「お客様は神様」的な奴隷的奉公を求められるのではないかと思われる向きもありますが、この本だと投資に見合わない顧客満足の追求には意味がない(利益となる顧客行動顧客行動に結び付かない限り顧客満足には意味がない)と言っています。

 

顧客満足というのは直接的な利益向上に結び付いているのかわかりにくいので難しいところではあるのですが、現場を疲弊させずに継続的にサービスクオリティを上げていくためには常に必要な視点だと思います。

 

 

J.D.パワー 顧客満足のすべて

J.D.パワー 顧客満足のすべて

 

 

【Review】大和不動産鑑定 編著:不動産の価格がわかる本

本書は大手不動産鑑定業者の大和不動産鑑定株式会社が設立50周年を記念して2016年に発行したものです。

 

オフィスからインフラまで8分野のアセットタイプの概要説明とエンジニアリングレポート(ER)などの説明まで300ページで網羅しております。ここまでテーマが広くなると内容が薄くなりがちなんですが、決してそういうわけではないところが優れています。

 

カバーにもあるように、不動産のある分野の実務担当者向きで自分がそれほど詳しくないアセットタイプのことを簡単に理解するにはちょうど良いと思います。あるいは不動産業界に入ったばかりの新入社員が仕事で関わる以外の不動産のことを見るにも向いているんじゃないかと。

 

最後にケーススタディが載っていますが、フォーマットが統一された収益還元法の収支 構成になっているのも比較しやすいです。本の性質上これっきりの出版になるような気がしますが、5年くらい経ったら改訂してほしいと思わせます。

 

 

不動産の価格がわかる本

不動産の価格がわかる本