【Review】NHKスペシャル取材班:キラーストレス 心と体をどう守るか

 

キラーストレス 心と体をどう守るか (NHK出版新書)

キラーストレス 心と体をどう守るか (NHK出版新書)

 

 本書はNHKスペシャルで放映された『NHKスペシャル「シリーズ キラーストレス」』での取材をもとに書き起こされた新書になります。

 

本書ではストレスとは、よいものであるにせよ、悪いものであるにせよ「変化」であると定義しており、生きている限りストレスはついて回るとしています。そして、ストレスを受けることによって生じる脳(偏桃体など)の変化が体に変調をもたらすとしています。上司との緊張関係にさらされていると常にストレスホルモンが分泌されている状態が例として取り上げられています。また子供時代のいじめがストレスとなり、脳の発達に影響を及ぼす例も紹介されています。

昔から何となく言われてきたことが脳に起こる現象として説明されています。

 

このようなストレスへの対策としては①ストレスの原因を避ける ②笑い ③友人や家族のサポートを得る ④運動 ⑤瞑想が挙げられています。また、ストレスがかかった時に備え「ステーキの写真を眺める」のレベルでいいのでたくさんの気晴らしリストを作っておくことも推奨されています。さらに、これらとは別のアプローチとして最近聞かれるようになった「マインドフルネス」の説明もあります。

 

支配的な上司の下にいることが常態化しているような状態の人はストレス対策を行うこと自体が既に難関だという現実があるはずなので、知らないよりは知っていた方がいいこともあるかもしれない、というレベルにとどまるような気がするのもまた実感です。

 

www.nhk.or.jp

【Review】中嶋康博 他:工場見学がファンをつくる ―実施ノウハウと評価方法

 

工場見学がファンをつくる ―実施ノウハウと評価方法

工場見学がファンをつくる ―実施ノウハウと評価方法

 

 自社のProperty(工場)をどのように見学させているのかという珍しい題材を扱っています。滋養の工場ではありませんが、Propertyを扱う仕事をしている立場として興味があったので、手に取ってみました。

 

工場見学の目的を「自社のファンをつくること」としており、ここまではよくある話なのですが、「ファン」というフワッとした用語を丁寧に定義していき、その定義に沿ったアンケートを作り、調査し、効果測定をしていくという流れが細かく解説されています。なので、一種の顧客満足度調査の事例を一冊にまとめた本と言えます。

 

この事例はかなり投資も人材も投入しており、なかなかまねできるものではありませんが、このような調査を具体例をもって解説してくれている資料は少ないのでその意味で非常に貴重だと思いました。

【Review】D・カーネギー:新訳 道は開ける

 

新訳 道は開ける

新訳 道は開ける

 

 普段自己啓発本の類は読まないのですが、一冊くらい読んでみてもいいかということで、Amazonセールの対象だった本書を読んでみました。

 

「不安を感じないようにする」「忙しさで不安を忘れる」「どうしようもないことは受け入れる」など、今となってはそれほど目新しくはないものの反対もできないことがならんでいます(しばしば登場する科学的な知見の妥当性はわかりません)

 

一回読めばいいかなという内容でしたが、SNSなんかで他者と相対化してしまって不安にさいなまれるような人が読むにはいいかもしれません。

【Review】水口剛:ESG投資 新しい資本主義のかたち

 

ESG投資 新しい資本主義のかたち

ESG投資 新しい資本主義のかたち

 

 GPIFの動向に引っ張られるような形で、本邦でも「ESG投資」という言葉を目にすることが増えてきました。職務上これに絡むことが増えてきているものの何のために取り組んでいるのかわからなくなるので、一度落ち着いて学ぼうと思って手に取った一冊になります。

 

長期投資を中心とする投資家は持続可能な社会を残すことが結果的に長期的なパフォーマンスの向上になる(からESG投資に取り組むのだ)、というのは嘘か本当かわからないですが、対外的な説明として使うには悪くないフレーズかなと感じました。

また主なESG投資の手法

①ポジティブスクリーニング(インデックスなどを使用し、投資対象を絞り込む)

②インテグレーション (財務分析にESG要素を織り込む)

③ダイベストメント(特定の企業を投資対象から外す)

④エンゲージメント(株主としての影響力を発揮し改善を促す)

の紹介もされています。ESG投資というとダイベストメントが話題になりますが、基本的にはエンゲージメント的なものの方が有効だという議論も同時に紹介されています。

 

細かい話では温暖化についてはカーボンフットプリントあたりは日本の省エネ法に割と近い考え方に見えるので、すんなり入ってきますし、強制労働の撲滅などは意義はわかるのですが、動物の権利などの項目になるとよく理解の出来ない倫理観が押し出されているので、意義を見出しにくいものだと感じました。

 

ESG投資に関する書籍は現状ではほとんどないため、とりあえず手に取る一冊としてお勧めだと思います。

【Review】エイミー・C・エドモンドソン:チームが機能するとはどういうことか ― 「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ

 

本書は「チーミング(=新たなアイディアを生み、答えを探し、問題を解決するために人々を団結させる働き方)」をキーワードにこれからの時代にあるべき組織(「学習する組織」)を論じています。

 

チーミングを構成する様々な構成要素が説明されていますが、特に印象深かったのはチーミングに必要なリーダーシップの一つとしてとして挙げられている「心理的に安全な場所をつくる」で、これがないと最も情報を持っているが、最も疑いの心を持っている地位が低い人たちは機能しない、ということが繰り返し論じられています。

 

心理的に安全な場所を作るために必要な行動として、「直接話の出来る、親しみやすい人になる」「現在持っている知識の限界を認める」「自分もよく間違うことを積極的に示す」「参加を促す」「失敗は学習する機会であることを強調する」「具体的な言葉を使う」「境界を設ける」「境界を越えたことについてメンバーに責任を負わせる」ということが挙げられています。

確かに実体験としてもこれらができない中間管理職がいるチームは完全に機能不全になっていましたので、納得感のあるところでした。

 

本書になる「学習する組織」はそれ自体、ある程度組織に余力がないと構築できないものだとは思いますが、実務はできない割に妙な万能感に満たされた50代の管理職に読んでもらいたいものです。

 

【Review】首都圏鉄道路線研究会:沿線格差 首都圏鉄道路線の知られざる通信簿

 

 本書は首都圏のJR、私鉄、地下鉄の歴史と属性を数ページずつ淡々と解説していくというスタイルの本です。首都圏にいても普段使わない路線のことは意外と知らないので、そういった路線の簡単な成り立ちを知るにはいいのですが、扱っているデータの比較があまり意味のないものだったり京浜東北線などの主要路線が取り上げられていなかったりして内容的にはあまり濃密なものではなかったです。

 

kindle版がセールの時に安ければ暇つぶしに読むような感じになると思います。

【Review】岩中祥史:名古屋の品格

 

名古屋の品格

名古屋の品格

 

 本書は2000年代後半に書かれたものなので、今の名古屋とは違うところはあるかもしれないと思いつつAmazonのセール対象だったために買って読んでみました。

 

全般的に「~に違いない」という言い回しに代表される著者の思い込みが目立ちこれが本当に実態を表しているのかよくわからない面は多分にあるものの名古屋出身者が名古屋に抱くイメージも投影されていると思われるので、割り切って読むことはできました。また、昔ながらの喫茶店、名古屋の人の夜は早いなど実感できる点もありました。

 

「花泥棒」「土俵泥棒」「ギフトセット解体バーゲン」というのはまったく聞いたことがなかったので、変わった風習だとちょっと驚きました(本当にあるのかわかりませんが)

 

名古屋財界の五摂家中部電力名古屋鉄道松坂屋東邦ガス、旧東海銀行)の中に岡谷鋼機が入ってないのは意外でした。

 

 

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