【Review】牧野 知弘:マイホーム価値革命―2022年、「不動産」の常識が変わる
マイホーム価値革命―2022年、「不動産」の常識が変わる (NHK出版新書 519)
- 作者: 牧野知弘
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2017/06/08
- メディア: 新書
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知り合いからいただきました。牧野氏はこの3年くらい、『空き家問題』上梓あたりから知名度が上がってきています。第一勧銀→BCG→三井不動産(ガーデンホテルズ含む)→パシフィックコマーシャルインベストメントを経て今はオラガ総研というホテルのコンサルティングなんかを手掛ける会社を経営しています。
こうして経歴を見ていると純粋に不動産の人、という感じもせず、 不動産の人と見た場合にはおそらくオフィスとホテルの人で住宅の人ではないと思うんですが、『空き家問題』以降はマンションの話を多くするようになっています。
出版ペースもかなり早く、以前の著書の使いまわしやデータを引っ張ってきて結論まで組み立てるまでのフローが確立されているんだろうなとうかがわせます。
内容の方ですが、以前から感じてはいましたが、牧野氏は部分部分を見ると明快に語っているようで、その実、全体を見ると結論がよくわからなくなるという傾向があります。区分所有建物(要するにマンション)は年数が経つと区分所有者間に利害不一致が多くなって、修繕も建て替えもままならないと言っておきながら、別の箇所ではマンションは7~8年経ったものを買うべきと言ってみたりという「それは整合性取れてないんじゃないですか」と言わざるを得ないです。
レジ(やオフィス)への投資はもう先がないから、これからはオペレーショナルアセットの視点を取り入れた店舗付住居がよいという解を気軽に言っているのはどう考えても首をかしげました。また「実際に、日本でもソニー不動産やヤフー不動産といった「ネット不動産ビジネス」は急伸しています」というくだりはソニー不動産が未だに赤字を解消できていないことを考えるとその現状認識が正しいとは思えませんでした。
【Review】岡田充弘:仕事が速い人ほどマウスを使わない! 超速パソコン仕事術
今年は大学を卒業して以来、まったくの手つかずだったPC周りの作業効率向上に取り組んでいて、最初に取ったのが本書です。Excelだけ、ブラウザ操作だけというわけではなく、PCを使う業務全般について触れられています。
序盤はPC設定、その後に初歩的なショートカット、Excel、Word、Outlookなどの効率化メソッドがだいたい見開き1ページで1つ書かれています。正直類書はたくさんあるのでしょうし、ここに書かれていることは少しネットで調べれば、わかるような簡単なことなのかもしれないですが、お昼休みに手軽に少しずつ読めるという体裁のものはなかなかなかったため、自分にはこの体裁と軽いタッチがあっていました。
こういう本ですべてを取り込む必要はないと思っていて、本書では前半部分が今の仕事の効率化にさっそく作用していてマウスを触る時間があきらかに減っている一方、後半はOutlookやAdobe acrobatを使用していない自分にはあまり参考にならなかったので、このあたりの効率化については別の方法をあたるしかないですね。
【Review】山内 正教:不動産アセットマネジメント
本書はJ-REITのグローバルワン不動産投資法人の資産運用会社、グローバル・アライアンス・リアルティの社長だった山内氏が社長だったころに書いたもので、当時あまり定義づけやプロパティマネジメントとの境がはっきりしていなかった不動産アセットマネジメントについて論じたものになります。
本編は160ページ程度しかなく、あまり数字を使っているわけではないので、見かけよりは読みやすくなっています。目立つのはプロパティマネジャーとの違いを強調して「あるべき不動産アセットマネジャーとは」ということを熱心に論じている点かと思います。不動産アセットマネジャーの指示の範囲内で個別物件のキャッシュフローの最大化を目指すプロパティマネジャーに対し、投資家の最大利益の達成を目指すのが不動産アセットマネジャーの使命だと説いています。
これ自体は全く正しいのだと思いますが、山内氏が運用していたJ-REITは競合銘柄と比べても投資家と向き合うIRに力を入れていたのかというと、そうとも思えないので、理想と現実というのはついてまわるのかなと感じます。
一番読んでておもしろかったのは頭の体操になるケーススタディとこれまた頭の整理に役立つ付録のレポートの見本でした。
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【Review】池尾和人:現代の金融入門 [新版]
【Review】榎本 篤史:すごい立地戦略 街は、ビジネスヒントの宝庫だった
すごい立地戦略 街は、ビジネスヒントの宝庫だった (PHPビジネス新書)
- 作者: 榎本篤史
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2017/03/18
- メディア: 新書
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商業というか店舗不動産はオフィスとも考え方や情報の廻り方が違うことは、実務に携わっていれば、なんとなくわかるものではありますが、正確にどのように考えているのかというのはなかなか表現できないものです。
本書ではロードサイド店舗、コンビニ、飲食店、出店戦略がいらない店舗などに分けてその考え方を極めて簡単に示してくれています。
それらの中で業態による違い、会社による違いや店舗運営を考える上での簡単な目安の数字などがあるので、これらは押さえておきたい項目です。薄くて読みやすい本ですが、満足度の高い出来でした。
"セブン-イレブンの出店は、さながら「ここにセブン-イレブンがあるべきだ。今そこに、何が建っていようと」というような出店の仕方です。"と書かれているセブン-イレブンの出店方針は印象的でした。富士そばとルノアールの話もありましたが、この2つに関しては少し綺麗に書いていると思いました。
【Review】林 兼正:なぜ、横浜中華街に人が集まるのか
著者は横浜中華街の広東料理店萬珍樓の社長です。
書いてあることは中小企業の社長にありがちな思い込みもあると思うんですが、華僑でありながら「俺たちにはここしかない」と言って日本で日本人に来てもらえる街づくりしてるっていうのがおもしろいですね。
冒頭の「町はつねに衰退に向かって疾走している」というフレーズが一番印象深いかな。確かに町(街)維持し続けていくだけでもエネルギーを使いますからね。
- ジャンル:広東料理
- 住所: 横浜市中区山下町153
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- (写真提供:しゅうりのしゅう)
- 萬珍樓をぐるなびで見る | 横浜中華街の広東料理をぐるなびで見る
【Review】森 稔:ヒルズ 挑戦する都市
森ビルの森稔氏が生前に出していた新書で、テイストは私の履歴書に近いものです。タイトルが「ヒルズ」なので、最初のアークヒルズ、象徴としての六本木ヒルズの話が中心で最後に上海環球金融中心と環状2号線開発の話が加わっています。
最初の100ページは都会開発に関する自らの持論が続き、ほとんど金の話が出てこないので、本当にディベロッパーの話なのかよくわからなくなりますがナンバービルや再開発の権利調整の話になると(きれいに書いていますが)貸ビル業、ディベロッパー的な話になっています。リクルートの江副浩正氏に第2森ビルの屋上(ペントハウス)を貸した話なんかもあってナンバービルやっていて上昇気流に乗っていく頃の話が一番好きかな。
広報等のソフトも含めた長期的なタウンマネジメント(の触り)については森ビルのような長期で街づくりをする志向でないと力を入れられないことですし、ワンフロアは大きい方がいいと言って六本木ヒルズの基準階を1400坪にした話などはのちに振り返ってみれば卓見だったのだと言わざるを得ません。
一方で森章や森トラストの話はただの一文字も書いてないので、ここに書かれていない(書けない)ことでも1冊以上本が書けるだろうと想像すると残念ですね。『ヒューリック ドリーム』と同じく不動産業界志望する就活生は一度は目を通しておいた方がいいかもしれませんね。
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