【Review】岩中祥史:名古屋の品格

 

名古屋の品格

名古屋の品格

 

 本書は2000年代後半に書かれたものなので、今の名古屋とは違うところはあるかもしれないと思いつつAmazonのセール対象だったために買って読んでみました。

 

全般的に「~に違いない」という言い回しに代表される著者の思い込みが目立ちこれが本当に実態を表しているのかよくわからない面は多分にあるものの名古屋出身者が名古屋に抱くイメージも投影されていると思われるので、割り切って読むことはできました。また、昔ながらの喫茶店、名古屋の人の夜は早いなど実感できる点もありました。

 

「花泥棒」「土俵泥棒」「ギフトセット解体バーゲン」というのはまったく聞いたことがなかったので、変わった風習だとちょっと驚きました(本当にあるのかわかりませんが)

 

名古屋財界の五摂家中部電力名古屋鉄道松坂屋東邦ガス、旧東海銀行)の中に岡谷鋼機が入ってないのは意外でした。

 

 

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【Review】渡邉 正裕:35歳までに読むキャリア(しごとえらび)の教科書 就・転職の絶対原則を知る

 

 本書は、折に触れて読み返していた本なのですが、先日『ゆとり世代はなぜ転職をくり返すのか?-キャリア思考と自己責任の罠』を読んで、久々に引っ張り出してきました。

 

自己責任を求められた90年代後半~2000年代前半の所謂氷河期世代が問題化していた頃の著作なので「普通の人が国にも社会にも頼らず、どのようにキャリア形成していくか」という話になっています。したがって全体的に感じ取れるのは国のことも社会制度のことも全く信じていないこと(利用できるものはする)というスタンスです。

 

その中で「まず働く動機(やりたいこと)を明確化していく。その動機を明確化していって出てきた選択肢から自分の能力(できること)にあったものを選んでいく。これを35歳までに完了させる」ことを提唱します。『ゆとり世代は~』では「できることを中心としたキャリア選び」を提案していましたが、これについては(出版された時系列は逆ですが)「動機が追いつかないキャリア形成は精神と肉体の破綻を招く」と批判的です。私は世代的なものもありますが『ゆとり世代は~』は解決策を提示しているようで特に新しいものはなかったと思っていますので、本書の方が今でも実践的だと感じます。

 

著者の渡邉氏はネット上ではタクシー渡邉とも言われ、しばしばクセのある論者と見做され、政治的主張の中にも首をかしげるものはありますが、キャリア論については普通の人にとって実践性の高いものだと思います。

 

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【Review】東京都総務局総合防災部防災管理課:東京防災

 

東京防災

東京防災

 

 東京都内の各世帯に配布されたので、都内在住の方は持っているはずのものですが、kindle版は無料で入手できますので、ダウンロードしてみました。

 

災害といわれると日本人が恐らく最初に思い浮かべるであろう地震に多くのページが割かれているのみならず、家庭での備え、オフィスでの備えと言ったシチュエーション別、洪水、火山噴火と言った災害種別など多岐に渡る災害を網羅しています(テロ攻撃、武力攻撃というものまであります)

 

340ページの本を一気に覚えることも、一字一句覚えこむことも現実的ではないので、普段は気の向いた時間のある時に2~3ページ読むとかそういう使い方がいいのではないでしょうか。また何かあった時にマニュアルとして持ち運ぶことを考えれば、バッテリーの供給が続く限り気軽に持ち運べるkindleは本書の目的と相性がいいのではないでしょうか。そういう意味ではkindle向きの本だと思います。

【Review】福島創太:ゆとり世代はなぜ転職をくり返すのか?──キャリア思考と自己責任の罠

 

 タイトルの通り本書はおもに2017年時点で20代後半~30歳くらいまでのゆとり世代に近い方々のキャリアについて論じています。

 

自分のキャリアに忠実な「意識高い系」と自分の感情に忠実な「ここではないどこか系」に分けてその長所、そして危うさを論じているわけですが、ジェネレーションギャップのせいか、世代的に自己責任に慣らされそれに疑問を感じなくなっているせいかどうも甘いこと言っているばかりだという印象です。

 

「したいこと」から「できること」を中心のキャリア形成を、という提言ですが、「したいこと」中心のキャリア形成の時に自分が今何をできるのかというのは当然考慮の要素に入っているので、いまさらこんなことを言われたところで何の解決になるのかという感想しか出てきませんでした。

 

論については以上ですが、キャリアアドバイザーと求職者が問答している章があって、これは客体として見る機会がないのでなかなかよかったですね。

【Review】石野 雄一:ざっくり分かるファイナンス~経営センスを磨くための財務~

 

ざっくり分かるファイナンス?経営センスを磨くための財務? (光文社新書)

ざっくり分かるファイナンス?経営センスを磨くための財務? (光文社新書)

 

本書はファイナンスについて諸学者向けに書かれた本ですが、ここで最初に強調されているのは会計(アカウンティング)とファイナンスは違うものだということです。外から見ていると似たようなことをやっているように見えますが、確かに狭い職場を見ているだけでも会計部門と財務部門は分かれていて話は完全に一致しているようには思えません。

 

読み進めていくと「欧米には経常利益という概念がない(本当?)」とか「無借金経営は債権者の発想であって株主の発想ではない」と言った印象的な言葉が出てきます。今まで読んだ所謂「財務諸表の本」と違って資本コストについても割合を割くなど、力点が確かに会計の本とは違いますね。

【Review】坂本 剛:知識ゼロから決算書が30分でわかる本

 

 決算書の読み方については多くの本が出版されていますが、本書は学生なども念頭に置きながら「Yahoo!ファイナンス」を活用して企業の特徴を簡便に知ることができるようになる、ということを一つのベンチマークにしている点が特徴となっております。

 

また、決算書の読み方、というとどうしても「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」に偏りがちですが、本書では上に挙げた「Yahoo!ファイナンス」→「決算短信」→「有価証券報告書」という情報の取り方のフローを示してくれているのがよかったです。「決算短信」の使い方がいまいちよくわからなかったので、その使い方とそれが総合的に見て最も重視されるべき資料という知見が得られました。

【Review】Testosterone:マッチョ社長のお悩み相談室 すべての悩みは筋トレで解決できる

 

筋トレのノウハウについていつまで経っても出てこないなぁと思っていたら、悩み相談の本だったようなので、求めていたものとはちょっと違う本でした。

最近、ゼリア新薬工業の社員が精神を病んで自殺した事件に関連して、社員の方が筋トレをしていたにも関わらず自殺した、ということで Testosterone氏が少し叩かれていました。

本書を読む限りでは筋トレ万能と言いつつも「6時間の睡眠と1時間の趣味の時間を取れないような仕事は辞めてもいい」などの話もしているので、筋トレ万能にはいくつかの暗黙の前提があって、それを勘違いすると不幸な結果になるんだろうな、と思いました。

私が持っている「筋トレしようと思ったもついつい有酸素運動に走ってしまう」に近い悩みがなかったのが残念ですね。